朝な夕なに、猫はいそいそ

猫ってやつは、朝な夕なに「いそいそ」する生物だ。朝食をねだるときは、率先して何度も振り返りつつ飼い主を誘導するし、食事と毛づくろいが一通り終わると、「さて！」という気合いで態勢を立て直し、眺めてると、改めてうたた寝し始めたりもする。愛すべき猫の生態をとらえた名著はいくつもあるが、その「いそいそ」ぶりを堪能したければ、この本（刊行後、「トラーは自分で餌代を稼ぐのよね」と近所の誉められものとなった）を。命短い猫ともう若くはない姉妹の、そうと知っているからこその「猫っかわいがり」ぶりを堪能。金井家の贅沢で妥協しない生活を覗き見できるうえ、四季のご馳走や古い映画のご相伴にも預かれる。

【五感連想】

• 食べたくなるもの：ギネスの黒ビール
• 聞きたくなる音楽：「ベートーヴェン　ピアノソナタ集」マウリツィオ・ポリーニ
• 想起する風景：江戸川公園から見る椿山荘
• 連想するモノやコト：紙袋、紙箱
• つながる本：『ノラや』内田百閒