印度
「い」の箱_印度 oto


印度の現在を語る「動物」とは?

1984年、インドのボパールで、殺虫剤工場から40tもの薬物が漏れ出し、毒ガスとなって町を覆った。死者3000人以上を数える「世界最悪の」ボパール化学工場事故である。本書は、実際にあったその事故で奇形となり、四つん這いで暮らす少年を主人公に仕立てた骨太なフィクション。「おれはかつて人間だった」と語る少年(〝動物〟と自称する)の、悲惨だが滑稽味もある独白が物語を牽引する。登場人物は、みんなどこか狂っているように思えるが、争闘と再生の場面は美しい。ゼロを産み、ウパニシャド哲学も仏教も産んだ印度の、長すぎた無抵抗の姿はわが国の原発事故とも無縁には思えない。


【五感連想】

  • 食べたくなるもの:タンドリー・チキン
  • 聞きたくなる音楽:「Live」Bob Marley
  • 想起する風景:「死を待つ人々の家」@カルカッタ
  • 連想するモノやコト:コロニー
  • つながる本:『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド
  • DVD:「エレファント・マン」デヴィッド・リンチ

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