苦み
「に」の箱_苦み oto


名文の香りと苦みがくせになる

この人を「蕗の匂いと、あの苦み」と評したのは長谷川時雨。24歳6か月で儚くなった天才女流作家の、奇跡の14か月に書かれた代表作の殆どは、200P足らずの文庫に収まっている。随分薄く収まったが、そこは一葉だ。5行や10行では句点に行き着かない息の長い文章に翻弄さて、気がつけば明治初年の東京市内に持ち運ばれている。主家に申し入れた借金を忘れたふりされ、引出しから2円を盗むお峰、「持たれたら嬉しいか、添うたら本望か」と己の腹を探るお力、離縁をせがみながらもなだめられ、帰路に初恋の人と巡り合うお関、みなみなわたしたちの同輩である。(大音)


【五感連想】

  • 食べたくなるもの:おすまし
  • 聞きたくなる音楽:「母の唄〜日本歌曲集」米良美一
  • 想起する風景:不忍池
  • 連想するモノやコト:縞の着物、どぶ板、人力車
  • つながる本:『あなたみたいな明治の女』群ようこ

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