偏愛
蔵六の奇病

蔵六の奇病
『蔵六の奇病』日野日出志

◎「へ」の箱 ー偏愛ー  ◎


日本の原風景への偏愛でもある

日野日出志の漫画には奇形、病に冒されて原形をとどめなくなった人間(「蔵六の奇病」)や四肢や顔面の一部を損なわれた人間(「水の中」)がよく登場する。容赦を知らない残酷で凄惨な描写は恐怖よりも哀れみを誘う。それは本来そこにあったはずのこの世の美しさ、人間というものの優しさに対する作者なりの偏愛の裏返しなのだと思う。表題作にて蔵六は七色の膿を垂れ流す原因不明の病に蝕まれつつも、その膿を絵の具として人知れず絵を描き続ける。そして死ぬ。そこには何の救いもない。ただ、蔵六が描いたとする絵だけが残される。人類への呼びかけとして、最も哀しい寓話である。(おかむー)


【五感連想】

  • 食べたくなるもの:冷めたにぎりめし
  • 聞きたくなる音楽:非常階段(JOJO広重)
  • 想起する風景:人里離れた山奥の池
  • 連想するモノやコト:エレファントマン、奇形、差別
  • つながる本:楳図かずお『漂流教室』

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