2012年の本箱
2012年のマイベスト

2012年もあと一日、今年発売された本でのおすすめ本をお贈りします。
アートに俳句にビジネス書、死者を想い、アンチエイジングし、美を願うほんばこやメンバーの多様さ異様さ別様さを楽しんで下さいませ。

『2666』ロベルト・ポラーニョ、野谷文昭ほか訳(白水社)
チリ出身の作家ロベルト・ボラーニョによる大判2段組み868ページ。
謎のドイツ人作家アルチンボルディの作品を発端として、4つの異なる物語が最終章で結合するアルチンボルドの奇想画のような物語。もともと5冊になるはずだった本が1冊にまとまったのだとか。
2週間格闘して、読み終わった後しばらく体調を崩したが、面白いことには間違いがない。(加藤)


『「日本史」の終わり 変わる世界、変われない日本人』池田信夫、與那覇潤(PHP研究所)
「中国化するか、再江戸化するか。それが問題だ」と提起する歴史学者與那覇潤と経済ブロガー池田信夫の対談。与那覇潤の前著「中国化する日本」を発端とし、池田信夫によって「近代西洋化」の視点が導入され、与那覇潤が切れ味鋭く世界を読み解いていく。世界は「西洋近代化」していくのではなく、「中国化」に向かっている、という言葉が気になる方は必読です。(岩橋)


『大人のリセット☆ビューティーーーマイナス10歳ー魔法のメイクースキンケア』メデューサ(角川学芸出版)
お友達の女装家・メデューサが出した本なので、大プッシュ。実用的なノウハウ満載です。(小磯)


 『おとな養成所』槇村さとる(光文社)
書店で買える、ガツガツしないアンチエイジング本は? とお嘆きのあなたに、『愛のアランフェス』の槇村さとる先生が書いた、「ハッピー・エイジング」の教科書を。(のーとみ)


『「菅原伝授手習鑑」精読ーー歌舞伎と天皇』犬丸治(岩波現代文庫)

『光圀伝』冲方丁(角川書店)
朱舜水はわたしの7年越しのアイドル。朱舜水の事跡を追いかける内、鄭成功を通じて歌舞伎や芝居にも興味が広がっていった。犬丸さんの本は「天皇制」について深く考えさせてくれ、冲方さんの本はエンタメだが、黄門様こと光圀の魅力を再確認させてくれた。(宮坂)


『共感覚という神秘的な世界』モリーン・シーバーグ、和田美樹訳(エクスナレッジ)
「共感覚」とは、文字や音に色を感じたり、形に味を感じたりする特殊な知覚。彼らどうしの会話は、「さっきの上司、怒鳴る前の青いところがおかしかったよね」などという具合。共感覚者同士の感覚は普遍性があるのも面白い。とても気がかりで、興味の尽きない世界です。(宮前)


『魂にふれる』若松英輔(トランスビュー)
『死者との対話』若松英輔(トランスビュー)

震災以来、死者のことが気がかりでならず、現代の霊性三羽烏・安藤礼二、鎌田東二、若松英輔の著書に引き寄せられる。近代文学の読み解きにも、今日を生きる杖にも。(赤羽)


『10分あれば書店に行きなさい』齋藤孝(メディアファクトリー新書)
『No.1営業ウーマンの「朝3時起き」でトリプルハッピーに生きる本』森本千賀子(幻冬舎)
『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』山中伸弥、聞き手:緑慎也(講談社)
日本語と身体論で独自メソッドを開発した教育学者、リクルートグループのトップ営業、ノーベル賞受賞の医学研究者と、ジャンルもスタンスも違うが、人生に前向きに取り組む人へのヒントが満載された本。(榎戸)


『日本の食卓 秋/冬:今だから伝えたい旬の献立帖』幕内秀夫、野崎洋光(アスペクト)
幕内氏は『粗食のすすめ』『変な給食』などで飽食日本に警鐘を鳴らす管理栄養士。野崎氏は、日本料理の名店「分けとく山」の総料理長。二人のコラボは、食のプロを目指しているわたしにとっては大事件です!(青梅)


『人と芸術とアンドロイド』石黒浩(日本評論社)
TEDxSeedsの顔とも言えるロボット工学者石黒博士の新刊。最新のテクノロジーは、博士を科学から哲学、そして芸術と倫理が渾然一体となった古代精神へと導いているようにも思える。(池澤)


『現代ミステリ傑作選 18の罪』L.ブロックほか、田口俊樹訳(ヴィレッジブックス)
ミステリーとは一体何をどうすることなのか、隠し事を開く手つき、騙りを語りあげる声色、そして物事の自明性を脅かす膝カックンのコレクション。最後の1行まで気が許せない。(野嶋)


『復興の書店』稲泉連(小学館)
岩手・宮城・福島の3県では9割の書店が被災したが、再開後の店頭で、本はまさに「生活必需品」として求められたという。モノとしての本と人の暮らしを見直す1冊。(YY)


『大阪アースダイバー』中沢新一(講談社)
『ならずものがやってくる』ジェニファー・イーガン、谷崎由依訳(早川書房)

脳内で古代大阪めぐりをすると、うたと思想の結びついていた世界が肌からすっと入ってくる。『ならずもの…』は時代も国も違うが、やはり「うた」が聞こえてくる1冊。(竹島)


『拉致と決断』蓮池薫(新潮社)
『「中国模式」の衝撃』近藤大介(平凡社新書)
自分の身にふりかかってもおかしくなかった「空白の24年間」。その証言を、他人事でなく読みつつ、日中韓の関係性の根本を探りたくなってきた。副読本は『日本史の誕生』岡田英弘(ちくま文庫)。(もも)


『怖い俳句』倉阪鬼一郎(幻冬舎新書
『旬菜膳語』林望(文春文庫)
俳句や短歌に数多く触れたいとき、作品集はまどろこしい。たとえば怪奇作家が集めた、芭蕉から現代までの「ぞっとする」俳句アンソロジー。また「美味」「食材」を軸に広がる俳句や短歌、漢詩の世界は、思いのほかに豊潤だった。(ナカムラ)


『アートを生きる』南條史生(角川書店)
『アートの起源』杉本博司(新潮社)
『芸術実行犯』Chim↑Pom(朝日出版社)

アートを「精神を物質化するための技術」だというのは杉本氏の名言だが、「セレブなら地雷撤去」というChim↑Pomの定義も捨てがたい。そんな内外のアーティストたち百人以上もと30年以上もつきあってきたキュレーター南條氏には頭が下がる。(まろんこう)


『原由美子の仕事 1970→』原由美子(ブックマン社)
スタイリストって華やかな職業と思われがちなのだが、ここで見る原由美子の仕事は職人的、地味でコツコツが持ち味だ。ファッション雑誌をもう一度、ちゃんと見てみよう! という気持ちにならせてくれた。(kusshi)


『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁(新潮社)
『ならずものがやってくる』ジェニファー・イーガン、谷崎由依訳(早川書房)
(2回目の登場)
「雄と雌が交配して、蔵書はどんどん殖えていく」と続く『本にだって…』は、読む松丸本舗。多くの本好きをうならせる。『ならずもの…』は、いまだ終わらない20世紀へのレクイエム。その近代と現代の壁を蹴破るためにわたしたちは存在し、そのためならなんでもやっていいはずだったのに。(oTo)


番外 今年読んで良かった本

『古代史ノオト』谷川健一(大和書房/1975)
『古代人と死』西郷信綱(平凡社ライブラリー/2008)
『海神記』諸星大二郎(光文社/2007)
今年の読書のなかで、今年出版されたモノはほとんど1冊もなかった。古代へ古代へと興味が遡っていくから無理もない。「卵生神話」や「黄泉の国・根の国」に思いを馳せると、子供ご禁制のマンガ棚、諸星大二郎に手が延びる。(堀江)


『すばらしい人間部品産業』アンドリュー・キンブレル、福岡伸一訳(講談社)2011年刊
クローン技術や臓器売買、人間ってどこまでモノなの? と思わせる1冊(島)

Tagged in: