魔女の本領
正統アルセーヌ・ルパンの未刊だった最終巻…

ルパン最後の恋

『ルパン、最後の恋』モーリス・ルブラン


正統アルセーヌ・ルパンの未刊だった最終巻だとのこと。怪盗ルパンは全然読んでいないので、この最終巻の意味がいまいちわからないが、ルパンの出自やら、イギリス、フランスをまたいだ恋が何と初々しく描かれていてほほえましい。ルパンの曽祖父はナポレオン旗下の将軍で、ナポレオンの勅命でジャンヌダルクが書き遺した本を伯爵夫人の手から盗み出すことを命じられて、難なく本を手に入れて、あろうことかその伯爵夫人をナポレオンンが愛人にしようとしていたのを逃して、更に自分が結婚してしまう。その孫がルパン何だそうだ。そしてその貴重な本もルパンに継承されている。時は飛んで、19世紀末元外交官レルヌ大公は生きることに飽きて娘コラを残して自殺するが、そのコラに近付いてくる男4人。伯爵やら軍人やら、貴族やら。実はそのうちの一人がルパンの仮の姿である。コラはイギリス次期国王に名が挙がっているオックスフォード公に見染められている。そのコラにイギリスから厖大な金が郵送される途中に行方不明になる。その金の争奪がメインテーマなのだが、ルパンは名を隠したまま、浮浪者の子供たちを助けて毎日体操を教え、教育を施している(この歴史的意味が何かありそうだが、思いつかなかった)。その中に親に虐待されている2名を養子にして、助手として使いルパンは金を手に入れる動きに出る。いわば騙し打ちなのだが、その手段が電気仕掛けの罠で、ネズミ捕り見たいに敵を捕獲するのである。どうも、ルパンはあまり怪盗ルパンとして闇に走るイメージからは遠く、元気に朝に体操するルパンて、何?という感じではある。ともかく金は取り戻し、本来の送り先のコラの手に渡るのであるが、コラは4人の男の内の誰がルパンか分かってしまい、ルパンに恋してしまうのだが、ルパンはオックスフォード公と結婚するように勧める。コラは一旦は婚約するのだが、心はルパンにあり遂にはどうやらルパンと結婚したようだ。なんだか、全然ドキドキしない探偵小説ではある。

魔女:加藤恵子