苦み
24ページで人生のしあわせと苦みを味わう

ルルちゃんのくつした

『ルルちゃんのくつした (あーんあんの絵本3) 』せな けいこ(福音館書店)

お昼寝の時に脱いだくつしたをなくしてしまったルルちゃん。くつしたはどこにいったかな? ルルちゃんは考える。うさぎのうさこが耳にかぶったかな? ねこちゃんが尻尾にはいたかな? 結局見つからなくて、「くつしたさん、ごめんなさい」とあやまって、おしまい。

くつしたが見つからないまま終わったのは、意外だった。と同時に、そのほうが現実的かもしれないと思った。これは、“お母さんが作った絵本”シリーズの一冊。幼い者への観察が行き届いている。こんなふうに見守られながら、子供は少しずつ人生の苦みを体験していくのだろう。

でも、苦いだけではない。くつしたを動物たちがかぶっているんじゃないかと想像するところは、なんと幸せな探し物かと思う。こんな探し物ならずっと続いてほしい。
いや待てよ。もしかすると、これらはすべてお昼寝の夢の中のできごとだったのかもしれない。本を閉じると、裏表紙に、ルルちゃんがなぞめいたうしろ姿で立っているからだ。

リアルと夢が交錯する。そんな子供の世界をそのまま写しとっている。
(よしの)