魔女の本領
地霊とのやり取りから日本文学を…

日本文学の大地

『日本文学の大地』


満月の夜に箒に乗ってはみたものの、疲労で居眠りして、地上に落下したので、少しは真面目に本読みにかからなければ。

というわけで、

『日本文学の大地』中沢新一著 を読む。

本書は後書きによるとかなり前(1995年から1997年)に、小学館の『新編 日本古典文学全集』のための月報に連載されたものだそうであり、作りも、古典の概要が書かれ、中沢の読みが書かれ、そのあとに原文と現代語訳が書かれるという体裁である。

書かれたまま放置されていたものを再度単行本化したという経緯だそうである。そのためか、あるいは新しく出すために編集されたのかは判然としないが、取り上げられた古典は時代に沿うわけでもなく、一見すると雑然と並べられた印象であるが、後に列挙するつもりであるが、取り上げた古典のすべてを大地に深く存在する霊的存在とそれを空間に誘い出し、日本人の心に貫入せしめて行く過程、即ち捕らえられない自然の息吹の中に生きていた近代以前の我等の先人たちの古典的な心性から古典文学を読み解いているというなかなか魅力的で、背筋がざわつく感じが快いのである。

この古典的心的空間について中沢は「自然と文化は分割されるのではなく、連続してつながりあっている。自然が文化の中に折りたたみ込まれ、文化は自然の内奥に向かっていくことを理想とした。こういう思想は、作家や知識人や芸術家によって抱かれていただけではなく、庶民生活や景観の中に息づいてきた。それどころか、料理、建築、造園、農業、漁撈、祭祀から経済システムの中にさえ、それは生きて来ている。古典文学を生んだこのような心的空間は、日本人の無意識の構造そのものをあらわしている。じつは「クールな日本」と言われているものは、ここから生まれている」と書いている。

さて、中沢が読み解いた古典作品に付けられた一言が絶妙である。さて、この作品はなんでしょう?全問正解者には、何も出ませんが、私のリスペクトを念にして送ります。それではスタート。

1. 権力のポルノグラフィー
2. 背中の後ろを流れる霊
3. 越境するポイエーシス
4. ある「終わりを」をめぐる歌
5. 幽玄の神秘主義
6. 大地に知を棄てる
7. 驚異的な軽薄
8. 人間の底を踏み抜く
9. 女が歴史を書くということ
10.国家を超えるカルマの法則
11.リピドーの裏地に描かれた女性文学
12.「淫」の自然思想
13.イデオロギーとテクノロジーのカオス
14.カタストロフィーの予兆
15.恋する換喩
16.恋愛の純粋構造
17.崩れゆく可能性世界
18.◎◎(人名)、擬制の成功
19.打ち棄てられ、地を這う「餓鬼」と「聖」
20.精神分析としての物語
21.老かいなる国家建設の書
22.人形、悲劇の化身
23.中世的思考の花
24.菩薩としての遊女

回答を示す前に、古典文学というものをどう理解するかと言うことについて、私たちはどうしても解釈することが先行してしまうばかりか、文字面が追えれば、理解できたかの印象を持ってしまう。まーそれすら難しいから、敬遠してしまうのが多くの人の姿勢である。しかし、翻訳された西洋のギリシアの古典なんかは当たり前のように、読んでいて、むしろ現代に通低する精神を理解していたりする。

しかし、日本文学の古典を読むことは何だか苦痛に感じられ、実際に深く理解するまでに至らないのは、日本人としては情けないとは思うのである。現在、日本の古典を現代語訳されているシリーズが評判を呼んでいるようなので、そのうち読んでみるつもりだが、現代語訳になると価値が落ちると考えるべきなのか、いやいや、熟達の現代語によって古典の息吹が吹き返すと考えるかはなかなか判断が難しいかもしれない。

しかし、中沢が読み解いて付けた一言には単なる読みの視点の鋭さだけではなく、いわば文学の本質の在り様まで深く読み込むことで得られる日本の古典文学の豊饒さと、中沢が得意とする霊的なものが現出する現場としての政治が文学作品から読みとれる。歴史と虚構を行き来する橋の存在としての文学の意味が明快に理解されるのである。

それぞれが非常に短い文章なので、紹介するのは避けたいが、文学を歴史の史料の欠落をうめるピースとして考える歴史学は今や当然となっている。文学とは嘘のコーテイングをした真実と考えるべきなんだろう。そう考えると、日本の古典文学とはたしかに地霊の可視化されたものであるのかもしれない。

さて、回答はできましたか?

1=源氏物語
2=万葉集
3=万葉集
4=万葉集
5=新古今和歌集
6=歎異抄
7=東海道中膝栗毛
8=松尾芭蕉
9=栄花物語
10=日本霊異記
11=蜻蛉日記
12=雨月物語
13=太平記
14=太平記
15=井原西鶴
16=井原西鶴
17=井原西鶴
18=大鏡
19=宇治拾遺物語
20=夜の寝覚
21=日本書紀
22=近松門左衛門
23=禅 竹
24=謡曲 江口

いかがでしょうか?全問正解。
うそーー。
それでは、魔女から送ります。「念」。

魔女:加藤恵子