情熱の本箱
本書のおかげで、私の人類進化の知識をアップグレイドすることができた:情熱の本箱(401)

 

情熱的読書人間・榎戸 誠

閑話休題、『人類の起源――古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』(篠田謙一著、中公新書)の最大の特徴は、近年目覚ましい発展を遂げている古代ゲノム解析に基づく研究の最新成果が縦横無尽に取り入れられていることだ。

●これまでは、約20万年前にアフリカで生まれたとされてきた現生人類(ホモ・サピエンス)だが、ネアンデルタール人と分かれたのは実は60万年ほど前だということが明らかになっている。ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は分岐後も交雑を繰り返していた。それだけでなく、他の絶滅人類とも交雑していた。

●進化を遂げたホモ・サピエンスはアフリカを旅立ったが、その旅程は、中東からヨーロッパや南アジアに向かい、東南アジアやオセアニアに広がり、次いで東アジア、南北アメリカ大陸にまで及ぶ壮大なものだった。

●最古のホモ・サピエンスが登場したのは、発見されている化石から、今のところ30万~20万年前のアフリカとされている。

●ホモ・サピエンスは、6万年前以降にアフリカから本格的に世界へと展開した。

●140万~90万年前にホモ・サピエンス、ネアンデルタール人、デニソワ人の共通祖先から分岐したもう一つの人類がいて、それがデニソワ人と交雑したと考えられている。

●ホモ・サピエンスの誕生については。20世紀の終わりまで支配的だった多地域新仮説が、21世紀になって、「アフリカで20万年前に誕生したホモ・サピエンスが、6万年ほど前に出アフリカを成し遂げて,旧大陸にいたホモ・サピエンス以外の人類を駆逐しながら世界に広がった」とする新人のアフリカ起源説に取って代わられた。また、2010年以降には、ホモ・サピエンスが世界展開の過程で他の人類の遺伝子を取り込んだことが明らかになっている。ホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人と交雑したということは、アフリカ起源説が多地域進化説の一部を取り込む形で収束したことを意味する。

●最終的に現代人と同じようなホモ・サピエンスとして完成するのはおよそ10万絵前以降と考えられている。一つのホモ・サピエンスの系統が単独で進化して誕生したのではなく、広い地域のさまざまな交流の中から現代型ホモ・サピエンスが形作られたと考えるほうが理解しやすい。

●日本列島に最初にホモ・サピエンスが進入したのは、考古学や人類学の証拠から、およそ4万年前の後期旧石器時代だったことが明らかとなっている。

本書のおかげで、私の人類進化の知識をアップグレイドすることができた。

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