半ズボン
「は」の箱_半ズボン oto


世界初の半ズボンヒーロー

文学史上、最初に半ズボンをはいた少年は? 答えは「わからない」である。1886年にバーネット夫人がセドリックに着せたのは、「膝丈ズボン」。膝も太腿も露な半ズボン少年が本の挿絵に登場するのは、この『飛ぶ教室』が最初である。ただ、挿絵画家の選んだ場面が、運動場での騒ぎに集まったギムナジウム生の群れ(半/長ズボンが混在する)だったため、個人特定には至らない。
児童文学の傑作『飛ぶ教室』に説明は必要ないだろう。それでも再読すると、子供の頃に読みとばした「大人の流儀」に目が停まる。出版年にナチス独裁が開始、焚書対象になった著者の運命を思うと、「どんな迷惑行為も、それをやった者にだけ責任があるのではなく、それを止めなかった者にも責任がある」の言葉がずっしり響く。ベンヤミンにはプチブル的と非難されたケストナーだが、「パンチを食らっても耐えられる」ことが大切だと、作品でも人生でも教えてくれた。


【五感連想】

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