祈り
頭の中がカユいんだ

『頭の中がカユいんだ』中島らも
       ◎「い」の箱 ー祈りー ◎


祈りの通じない世界への祈り

「僕は、今夜ほぼ完璧に盗み尽くされてしまった」に始まる中島らものデビュー作。社会適応できないまま「バンドで一発逆転したろやないかい」と集めた金を女に持ち逃げされた直後の日常を、日記ともエッセイともつかず描く〝らも節〟の原点である。酔いどれやおかまやジャンキーとすれ違う阪急東通りの情景は、ビートニクやロードムーヴィーよりも、狂死間際の『リア王』荒れ地の場に酷似。どうあっても「祈り」を聞き届けない世界に向けた、生涯の〝なれずもの〟たちからの愚痴や悲鳴や照れ笑いが、共振する場だからなのか。


五感連想

  • 食べたくなるもの:カネテツのちくわ,焼きジャガイモの味噌づけ
  • 聞きたくなる音楽:「Satisfaction」Devo
  • 想起する風景:阪神高速道路東横堀側近辺のホームレス
  • 連想するモノやコト:パンク,ジャンク,ドラッグ
  • つながる本:『パースペクティブキッド』ひさうちみちお
  • DVD:「裸のランチ」デイヴィッド・クローネンバーグ