漁師
漁師と書いて「すなどり」と読む

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『内海の漁師』
アーシュラ・K・ル=グィン

『ゲド戦記』で知られるアーシュラ・K・ル=グィンの1990年代前半のSF作品を集めた短編集。8本のうち後半の3本がいわゆる「ハイニッシュ・ユニバース」と呼ばれる未来史をテーマとしている。 表題作はそのひとつで、「内海の漁師」とは浦島太郎の物語を指している。そう、ル=グィンにしては珍しく日本人(の末裔たち)を主人公に据えて、美しくも奇妙な婚姻関係を描いている。1970年代の代表作『闇の左手』や『所有せざる人々』に見られたような、文化人類学的な考察が悲劇的なストーリーへと昇華する手腕が健在なのが嬉しい。男性作家には絶対思いつけない、斬新な方法でワープ航法を実現する「踊ってガナムへ」も秀逸。
【五感連想】

  • 食べたくなるもの:インディアンたちの素朴な食事
  • 聞きたくなる音楽:インディアンたちの儀式の歌
  • 想起する風景:地球から遠く離れた辺境の惑星
  • 連想するモノやコト:男性原理に支配されたSFというジャンル
  • つながる本:『サイボーグ・フェミニズム』ダナ・ハラウェイ