るんるん
るんるんするのに、男は要らない。

 

『るきさん』高野文子

いつも上機嫌でいるためには、流行もヤリガイのあるオシゴトも、家族やメディアやコミュニティもじゃまなだけ。そんな過激な宣言を、国家が主導したバブルのまっただなか、マガジンハウスの雑誌「Hanako」上で展開していたのが、この「るきさん」だ。高野文子作品のなかでは異色とも言えるわかりやすさ、へんのなさが特徴だが、含んだ刃はさすがに鋭い。
るきさんの「るんるん」のタネは極めて正統派のものばかり。たとえば自転車で近所の図書館へ行くとか、綺麗な絵柄の切手を蒐めるとか。あるいは炊きたてご飯を正座で頂く、障子を張り替え、窓を磨く。お風呂で「あー」と声を出す。医療保険の仕事をするときでさえ、計算が大得意だから、ひと月に一週間ですんじゃうから、るんるんできる。
国家と商品経済社会と男からの逸脱のススメは、鮮やかな描線と色を持っていた。それがいつか「おやじギャル」と化し、今では単なる「のんきのススメ」と読めてしまうのが、ああ、クヤシイ。(oTo)

【大阪弁ミニミニ講座002】:へんのない
特徴がない、偏りなくプレーンである。「そつのない」に似ているが、ほめながら内心で嗤うときに「そつない」、くさしつつ安心したときに〈へんない〉と使い分ける。〈愛想もこそもない〉に至る一歩手前を指す。用例〈へんのないやっちゃ〉〈そらえらい、へんないのぉ〉。

【五感連想】