沈黙
17歳の饒舌な沈黙

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『解錠師』スティーヴ・ハミルトン

古きよき時代のミステリ小説は三人称の神-作者の視点からその犯罪がいかにしてなされ、いかにして解決されたか、つまりトリックとその開け伏せを中心に描かれた。ポストモダニズムの時代に物語世界やテクストというものが作者の紡ぎだす言葉よりも遥かな広がりを持つようになると、一人称の叙述がストーリーに必要なだけの範囲を切り取るしかなくなった。そこで描かれるのは”私”にとって犯罪とはどういうものなのか、となる。2012年版文春で1位。幼年時代の悲惨な事件により声を失った主人公は17歳にしてプロの金庫破りとなり孤独な放浪の日々を送る。犯罪によって照らされた淡い青春。そこに明るい光を差し込むのはいったい何であったか。(おかむー)

【五感連想】

  • 食べたくなるもの:よく冷やされた極上のワイン
  • 聞きたくなる音楽:The Beach Boys 『Pet Sounds』
  • 想起する風景:マリーナ・デル・レイ
  • 連想するモノやコト:映画「オーシャンズ11」
  • つながる本:『幽霊たち』ポール・オースター