月の見えない夜には何て言う?

おつきさまこんばんは『おつきさまこんばんは』林明子(福音館 あかちゃんの絵本)

 全ページ、背景が群青色で塗られている。夜の空が舞台だ。ページをめくっていくと、真黄色に塗られたこうこうと明るい月が現れる。そこで、「おつきさま こんばんは」と呼びかける—。

その後、おつきさまは雲に覆われてしまうが、やがて再び姿を現す。ごく自然なストーリー。全部で8つの絵と話しかけの言葉で構成されている。展開がリズミカルだ。8つというのがミソなのかもしれない。読むと、自然とおしゃべりしたくなってくる。

ある晩、空を見上げると月が隠れていた。「くもさん、こないで」。絵本の中の言葉が、ふっと頭に浮かんだ。こんなふうに夜空と会話できること、忘れてたなあ。大人になるうちに硬直してしまっていたものの見方が解きほぐされる。絵本の名手、林明子のやわらかな眼差しが、私の言葉の棚をひとつ増やしてくれた。
こういう喜びがくっついてくるから、童心に帰るとワクワクする。
(よしの)