をろち
エロスの王道、カミの伝統

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『雨月物語』上田秋成

 をろち大蛇といえば、梅図かずおかスサノヲか、はたまた「安珍清姫」か、というぐらいの凄まじいものだが、『雨月』の「蛇性の婬」は、題名が凄すぎる。〝〟でない〝〟の字に過剰反応したくなるが、環状構造をなすと言われる『雨月』の並び中、浮気男の末路を描く「吉備津の釜」と稚児愛の果ての人食いが主題の「青頭巾」(それにしても西洋の「赤ずきん」とはエライ違いだ)の間に位置する「エロスの王道」扱いであるから、まあよしとする。

ストーリーは単純で、妖しい女性真名子の純愛が寄ってたかって邪魔される次第だ。雨宿りで知りあった網元の次男豊男は、浜には珍しく都びた絶世の美男。さっそくその夜の夢に出て、翌日には男から来訪する気にさせる。ちょいと水を向ければ男は手もなくメロメロだが、「親の許しを得ねば」と帰っていく。土産に持たせた宝刀がたたって男は牢に入れられ、ビビって和歌山から奈良まで逃げて行った上、ほかの女を娶ってしまう。それでも豊男を諦めきれなかった真名子は…。

蛇が祟るのは、カミであるから当たり前。他人事なのに成敗せずにおれぬ僧たちの、嫉妬まじりのパラノイアのほうが、わたしゃよっぽど怖いのでおます。(oTo)

【大阪弁ミニミニ講座004】エライ
大変な、とても。
転じて、「たいそう疲れた」ことや「重大な悩み」等も「エライ」と称する(この場合のみ。「あー、エラ」と語幹での終止形が使われる)。
用例:「えらいこっちゃがな、市長発言」「なんやねん、今さら。あら、ホンマえらいやっちゃどぉって、はなから言うとんがな」「ほんなもん、えらそばってから、何様や思てけつかんねんゆう話やがな」「ほっとけ。ヘタレな犬ほどよう吠えるんじゃ」

【五感連想】