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「もくろみ読書法ワークショップ」@東京大学生協会館 2013/03/30

早咲きの桜が、まだまだ絢爛の装いを続けていた3月30日土曜日の午後。

東京・東高円寺の蚕糸の森公園の近くある大学生協会館にて、「大学生のための読書術」と題しほんばこや企画「もくろみ読書法ワークショップ」を実施しました。今回は、その様子をご報告。

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主催は、横浜国立大学読書サークル「友蔵」と、大学生協の協力のもと多彩な大学の読書倶楽部の代表で運営されている「リーダーズクラブ」。いわば本数寄大学ネットワーカーさん達です。

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「ほんばこや」からは、ワークショップのナビゲーターとして、池澤祐子をメインとして、大音美弥子、赤羽卓美、岩橋が参加しました。

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参加者は、慶応大学や桜美林大学などの大学生12名と大学図書館職員、生協職員さんなど社会人4名の合計16名でした。

IMG_5103  参加者のみなさんにも持参いただいて、用意したのは、新旧硬軟織り交ぜた100冊近くの新書です。

  今回準備したワークショップは、「もくろみつなぐ読書法」ワークショップは、三部仕立て。ぱっと選んだ一冊を立ち読みしどんな本かを目安づけする「もくろみ読書」、三人一組になって、偶然の三冊に新たな関係線をつないでみる「三冊つなぎ共読」、最初に自ら選んだ1册に関連しそうなもう1冊を選び、そこへ偶然与えられた1册の間に関係線を見つける「2プラス1読み取り読書」

「もくろみ読書法」は、「目次を読む」ことで本の構造を理解し、予断を持って本と対峙することで、自分の興味ある情報が引っかかりやすくなるというもの。気になる本の中味と全体の感覚的な構造を20分ほどで一気につかんでしまいます。
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アンケートでも「まるまる一冊読んだ気分になれた」とか「がっつり読まなくても本について語れるのにびっくり」などの感想がありました。


「三冊つなぎ共読」では、三人一組になり、自分が選んだ本について、もくろみ読書法でつかんだ大まかな本の内容をを紹介し合い、その上でお互いに持ち寄った一見全く関係のない3冊間の関係性を考えていただき、各チームごとに発表してもらいました。

チームごとでの話し合いの様子
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 なかなか「共通項を見つけるのは難しかった」ようですが、「関係性を見つけたときには新鮮な驚きがあった」とのことです。

各チームの本たちと関係線です。

IMG_5158●関係線 「解読」
分類学からの出発 吉田 政幸
甲骨文字の読み方
 落合 淳思

宮崎アニメの暗号 青井 汎

IMG_5173 ●関係線 「真理」
スピノザの世界 上野 修
「わからない」という方法 橋本 治
翻訳教室 鴻巣 友季子

IMG_5182 ●関係線 「時間 永続と瞬間」 月9は超サイヤ人になれるか?
マンガの遺伝子 斎藤 宣彦

ウェブはバカと暇人のもの 中川淳一郎
「時間」哲学する 中島 義道

IMG_5162 ●関係線 「人間 心技体」
人体 失敗の進化史 遠藤 秀紀

子供は言葉を体で覚える 正高 信男
じぶん この不思議な存在 鷲田 清一

IMG_5168●関係線 「過去から未来へ」
悪女入門 鹿島 茂
世にも美しい数学入門
 藤原 正彦 / 小川 洋子
自分と未来のつくり方 石田 英敬


最後は、「2プラス1読書法」です。これは、最初に自分で選んだ1冊に加えて、自分でもう1冊を選びます。そして、私たちにより勝手に配られた1冊という偶然をプラスして、その三冊の間の関係線を作るというもの。

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全員一人ずつ、プレゼンしていただきました。
「人前で自分の考えを話す、ということ自体を難しい」感じる学生さんが多かったようですが、みなさん、大変饒舌に個性あふれるかっこいいプレゼンテーションをされていましたよ。

IMG_5260●関係線 みんながすなわちという原理
選んだ1冊 甲骨文字の読み方 落合 淳思
2冊目 記号論への招待 池上 嘉彦
降ってきた1冊 社会的ジレンマ  山岸 俊男

IMG_5267 ●関係線 物語
選んだ1冊 宮崎アニメの暗号 青井 汎
2冊目 日本神話とアンパンマン  山田 永
降ってきた1冊 ソーシャルゲームの凄い仕組み  まつもとあつし

IMG_5224 ●関係線 自分の中の他者
選んだ1冊 じぶん この不思議な存在 鷲田 清一
2冊目 つながりの作法 綾屋 紗月/熊谷 晋一郎
降ってきた1冊 がん遺伝子の発見 黒木 登志夫

IMG_5206 ●関係線 私たちはどこまで共有できるのか 数学から知そして美について
選んだ1冊 世にも美しい数学入門 藤原 正彦 / 小川 洋子
2冊目 ぼくらの頭脳の鍛え方 立花 隆/佐藤 優
降ってきた1冊 杉浦康平のデザイン 臼田 捷治

IMG_5305 ●関係線 ミステリー
選んだ1冊 ぐるり一周34.5キロ JR山手線の謎 松本 典久
2冊目 時刻表ひとり旅 宮脇 俊三
降ってきた1冊 仕事に役立つインテリジェンス 問題解決のための情報分析入門 北岡 元

IMG_5251 ●関係線 すべては繋がっている
選んだ1冊 自分と未来のつくり方 石田 英敬
2冊目 武器としての決断思考 瀧本 哲史
降ってきた1冊 砂の文明・石の文明・泥の文明 松本 健一

IMG_5309●関係線 救い
選んだ1冊 悪女入門 鹿島 茂
2冊目 悪の読書術 福田 和也
降ってきた1冊 自殺の心理学 高橋 祥友

IMG_5219●関係線 社会
選んだ1冊 翻訳教室 鴻巣 友季子
2冊目 なぜ日本人はとりあえず謝るのか 「ゆるし」と「はずし」の世間論  佐藤 直樹
降ってきた1冊 キヨミズ准教授の法学入門 木村 草太

IMG_5195●関係線 一瞬と永遠
選んだ1冊 ウェブはバカと暇人のもの 中川淳一郎
2冊目 ネットとリアルのあいだ 西垣 通
降ってきた1冊 日本恋愛思想史 小谷野 敦
  IMG_5196 ●関係線 人生は分類と定義と編集である
選んだ1冊 分類学からの出発 吉田 政幸
2冊目 系統樹思考の世界 三中 信宏
降ってきた1冊 生物と無生物のあいだ  福岡 伸一

IMG_5240●関係線 観察と本質
選んだ1冊 人体 失敗の進化史 遠藤 秀紀
2冊目 世界は分けてもわからない 福岡 伸一
降ってきた1冊 財務省  榊原 英資

IMG_5215 ●関係線 物語を生きる術
選んだ1冊 子供は言葉を体で覚える 正高 信男
2冊目 物語の役割 小川 洋子
降ってきた1冊 社会を生きるための教科書 川井 龍介

IMG_5282 ●関係線 闘いながら時を刻む
選んだ1冊 「時間」哲学する 中島 義道
2冊目 2011年新聞テレビ消滅 佐々木 俊尚
降ってきた1冊 オタクの息子に悩んでいます 岡田 斗司夫 FREEex

IMG_5245●関係線 神
選んだ1冊 スピノザの世界 上野 修
2冊目 物理学と神 池内 了
降ってきた1冊 池上彰の宗教がわかれば世界が見える 池上彰
 
IMG_5294 ●関係線 鳥山明が世界を支配する
選んだ1冊 マンガの遺伝子 斎藤 宣彦
2冊目 ことばの力学  白井 恭弘
降ってきた1冊 世界共和国へ  柄谷 行人

●関係線 わかるとはどういうことか
選んだ1冊 「わからない」という方法 橋本 治
2冊目 「世界地図」の意外な読み方 正井 泰夫
降ってきた1冊 宇宙は何でできているのか 村山 斉

弥生三月のラストをかざり、読書をひとりのものにしない「もくろみつなぐ読書法ワークショップ」。午後4時スタートで7時過ぎまで、3時間にわたり「本」をめぐる熱き出会いとかたりあいでつながりました。

アンケートでは、考える時間よりも、語る時間を長くして欲しいという要望もあり、みなさん「読むこと」より、「語ること」そして「聞いてもらうこと」を楽しんでおられました。 情報との対峙の仕方、つまりは世界との対峙の仕方が、これによって豊かになればいいなと思っていたのですが、アンケートでは「良くも悪くも啓蒙的」と鋭いツッコミが入っていましたよ、流石です(笑)
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自分本位の読書から、本から本へひとからひとへとつながる「本読み」へ。
ほんばこから多彩に拡がる実感をえていただいたのではと思います。

ほんばこやではこれからも、対象者や場所との相互編集を行い、いろいろアレンジしてのワークショップを実施していきたいと考えております。
ご興味のある方はお気軽にご連絡下さいませ。よろしくお願いします。