ろうろうの人にとうとうと習う
安田さんは、朗々としている。宝生流ワキ方能楽師として、謡い舞い、稽古三昧の日々を送っているのだから当然だ。その安田さんは、世界を旅する浪々の人でもある。「論語」の新しい読みを提唱し、芭蕉の「奥の細道」を辿り直し、「和」の身体作法を語って倦むところがない。本書は「漱石で読む」和の朗読法を教える実用テキストだが、読む、語る、歌うことの本質が収められ、ただ読んでもおもしろいし、やってみようかという気にもさせる(CDも付属)。今はヘブライ語勉強中の能楽師、その滔々と汲めども尽きぬ知恵の源流に、迫れるかもしれないのだから。
【五感連想】
- 食べたくなるもの:餅
- 聞きたくなる音楽:「真夜中に心中」てるる
- 想起する風景:瀬戸内海
- 連想するモノやコト:能楽堂,土間
- つながる本:『吾輩は猫である』夏目漱石