ことば以前の祈りに誘われる、あわいの世界
飄々とした、そこはかとないおかしみがにじみ出る文体で知られる田中小実昌の短編集。表題作「ポロポロ」は、太平洋戦争開戦直前、著者の父が牧師をつとめていた教会の信者たちの集まりがあった夜の不思議な体験を描く。「ポロポロ」とは、聖書にある「異言」で、読み進むうちに無数のポロポロにつきまとわれながら、いつのまにか生者と死者のあわいの世界に迷い込んだような幻惑を味わう一編。(nanako)
【五感連想】
- 食べたくなるもの:おせんべい
- 聞きたくなる音楽:
- 想起する風景:ゲッセマネの園
- 連想するモノやコト:内村鑑三、イエス之御霊教会
- つながる本:『とほぼえ』内田百けん