推理小説と言えば誰だって、何冊かは読んだことのあるのが、「シャーロック・ホームズ」だ。読んでるうちに、ホームズ=作者ドイルみたいな気持になるが、これがまんざら間違いとも言えないらしい。そこで読んでみた。
『裏読み シャーロック・ホームズ ドイルの暗号』小林司 東山あかね
来年の学魔高山の朝カル講義の参考書です。著者は精神科医で、日本を代表するシャーロキアンである。それ故、シャーロック・ホームズの作品全体が、ドイルの成長過程に及ぼした家庭の意味から分析した、かなり面白いものになっている。ホームズ作品はかなり探偵小説としては突っ込みどころ満載なのだそうで、その主な原因が、ドイルが自分の家族の醜聞を隠そう隠そうとすればするほど、あちこちに書き込まれたということらしい。最大の問題はドイルの父親が精神病院に入院の末になくなったこと、母親が15歳も年下の下宿人と不倫を続けていたこと。ドイルは幼少期知人に預けられていて、いわばアダルト・チルドレンで、その母親を嫌悪していたこと。それはヴィクトリア朝の偽善的な文化の中で、絶対に知られてはならないことであったらしい。これらのことを突き止めたのが筆者たち日本のシャーロキアンだということである。本の読みとして、確かに裏読みではあるが、面白い。巻末に戦後のホームズ研究書が列記されているが、160冊にもなっていて、とんでもない数である。
さて、ドイルの晩年をみなさんご存知でしょうか?オカルトにのめり込んで『心霊学史』2巻を書いている。妻(2度目の)を霊媒として降霊会を開催し、オーストラリアやアメリカに講演に行っているが、頭脳明晰、科学的な推理で鳴らしたホームズはいなくなり、読者は離れたという。しかし、時代の裏側でこの心霊主義、降霊会は隆盛を極めた時代でもあった。この系譜は又の機会に。
魔女:加藤恵子