6つの「女の嘘」を連ねた、バロック真珠の首飾りのような連作集。著者は、『通訳ダニエル・シュタイン』で日本でもおなじみ、サガンが老けたようなセシールカットのおばちゃんである。ソ連からロシアへ国家が激変するなか、著者の分身と思えるジェーニャが、聞き手=嘘のつかれ手を引き受ける。その耳を捉える嘘も「元貴族〜党員セレブを見舞う悲劇」から「外国で稼ぐ娼婦の身の上話」へと変遷。ようやくジェーニャが主人公となる最後の1編は、涙なしには読みにくい。紅お白粉や自身の嘘で、奮い立つのが女のマコトなのだろうか。(oTo)
●五感連想
聞きたくなる音楽:パルナスの歌
想起する風景:クレムリンの赤い星
連想するモノやコト:
つながる本:『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里
DVD:「黒い瞳」マルチェロ・マストロヤンニ