『AV女優』永沢光雄
本来「濡れ場」とは男女の出会いと別れの物語における、ひとつの挿話を指す。当事者だけに秘められた「出来事」の場であって、性行為そのものではない。川の流れにおける澱みのようなもの。だから、澱みだけで成り立つアダルトビデオというものは濡れ場から最も遠いところにある。その中でAV女優という存在は吹けば飛ぶようなあぶく。安っぽい幻想と共に消えていく。…この国にはそんなAV女優が星の数ほど生まれた。ある人はお金のためだったし、ある人は単純にそれが好きだったから。その多くが普通の家庭に生まれて普通に育って、だけどどこかで道を踏み誤って、男女の普通の物語から爪弾きにされた。彼女たちを見守る永沢光雄の視線が優しい。(おかむー)
【五感連想】
- 食べたくなるもの:屋台のおでんで熱燗
- 聞きたくなる音楽:月並みなJ-POP
- 想起する風景:郊外の団地、空になったブランコ
- 連想するモノやコト:歌舞伎町の喧騒
- つながる本:『今月のフェミ的』獣フェミニスト集団FROG