一緒に贈りたい本:『ロウソクの科学』マイケル・ファラデー、三石巌訳
ソファに深く掛け、天を見上げるボルヘスを写したモノクロ写真が印象的な表紙。めくればそこは1977年、冬のブエノスアイレス。77歳の作家ボルヘスが7夜に渡って行った講演の現場です。
テーマは「神曲」「悪夢」「千一夜物語」「仏教」「詩について」「カバラ」「盲目について」。洋の東西をまたいだ多彩なテーマは彼に付きまとう切実です。それは身に起こる苦や不幸をどのように変質させて救済するかということ。それができれば苦や不幸は神の賜物だと思えるようになる。ボルヘスはそう信じて創作を続けてきました。
クリスマスとはどこか神様を感じたくなる一日でもあります。洋の東西を問わず多くの神々を受け容れてきた日本のクリスマスに、ボルヘスとともに静かに神の賜物を感じてみてはいかがでしょうか。読むうちに彼のもつ知的誠実さが、淡くはかなくもたしかに降り積む雪のように、あなたを包み込んでいくでしょう。(石口)