『エスケープ・ヴェロシティ』マーク・デリー
『ニューロマンサー』を皮切りにSF文学から始まった「サイバーパンク」はインダストリアル・ミュージックやボンデージ・フェチといったサブカルチャー全般へと飛び火していったが、1980年代にはまだ空想の域を出るものではなかった。エイズとインターネットが世界を覆い尽くそうとしていた1990年代前半、「ヴァーチャル・リアリティ」が現実味を帯びたものとして語られるようになった途端にそのイメージは過激さを増していった。肉体にリアルはなくなる。機械と融合してサイボーグとなるか、仮想世界に別の人格を見出すか。本書の書かれた1996年にはそこが争点だった。21世紀の今もはや身体にかつての価値はない。「私」は居場所をなくしている。(おかむー)
【五感連想】
- 食べたくなるもの:メガマックとダイエットコーク
- 聞きたくなる音楽:Nine Inch Nails 『Downward Spiral』
- 想起する風景:いわゆる『トロン』的なサイバースペース
- 連想するモノやコト:Survival Research Laboratories
- つながる本:ニール・スティーブンスン『スノウ・クラッシュ』