「あの帽子」の行方は母国に訊け
副題は「名著でたどる日本思想入門」。五輪などを見て、ふと感じる「なぜ日本人には素朴な『母国・祖国愛』が許されないのか」の答えは、本書の記述を見れば明らかだ。明治国家が生んだ最初の国民である石光真清、隠岐コミューンの橋川文三などの忘れられた記憶の記録に始まり、唱歌や風景、文化を通じて形成され、粉々に解体されていった「日本人の母国観」が念入りに発掘・修復され、順を追って展示されている。圧巻は『男一匹ガキ大将』の金太郎が目指した男気ナショナリズムと「日本の会社」というシステム。日本人共同体の明日を考えるための宿題がいっぱいだ。(大音)
【五感連想】
- 食べたくなるもの:日の丸弁当
- 聞きたくなる音楽:「Opera」坂本龍一
- 想起する風景:松島
- 連想するモノやコト:海岸線、コミューン、ディスカバージャパン
- つながる本:『「国語」という思想』イ・ヨンスク