待ちきれなくて連載で読んでしまってはいるのだけれど、吉田秋生先生の「海街diary5 群青」を購入。鎌倉を舞台にした香田四姉妹の物語である。前作ともいえる『ラヴァーズ・キス』とのシェアード・ワールドになっており、一話ごと姉妹の一人を軸にしたエピソードが展開される。漫画というフレームをこえて感じられる海街の物語的質感は、さまざまな物語記憶と結びつく。TBSのホームドラマ、向田邦子、久世光彦のドラマのようであり、小津安二郎から人間観察としてのチェーホフの作劇までの深度さえ感じさせる。五巻のエピソード群は、とくにキレとコクが冴え冴えとしている。また、これだけすっと物語に入り込める漫画はそう多くはない。内面の共同体としての世代的な記憶の影響なのか、物語の相性についても考えてみたいテーマである。
なんとなく手元にあった物語といっしょに本箱にいれてみた。連想のイメージはひろがるだろうか、そして、海街好きの多くの人が、どんな物語を連想していくのか気になってくる。
【海街の本箱】
- 海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
- 海街diary 2 真昼の月
- 海街diary 3 陽のあたる坂道
- 海街diary 4 帰れないふたり
- 海街diary 5 群青
- すずちゃんの鎌倉さんぽ―海街diary
- ラヴァーズ・キス (小学館文庫)
◎海街連想 物語の質感